神戸の訪問看護師藤田愛さんの投稿をコピーして皆様にご紹介させていただきます。
千分の一のコロナの訪問看護
敗戦中の従軍看護師はこんな気持ちだったのだろうかとか、毎日ぽきぽき心が折れてゆく。一日回れても8人、重症者が増えてきたので一件ずつの訪問時間が長くなる。
せめて入院までの間、訪問してくれる訪問看護ステーションをご存じないですか?もうその保健師さんの声が悲鳴である。知っているけどないとは言えなかった。行きますよと返事してしてしまうのが、自分の弱さだと分かっている。
有料道路を乗り継いでいく初めての土地、真っ暗だからここは県外か?どこに向かうのかとか訪問先のことなのか、自分のこと何か分からん問いがわいてくる。
到着が21:00になった。家のドアを開ける時に心が定まる。できることをする。
待たせてごめんね。病院の廊下でもいいですから、入院させてほしいとお母さんに手を合わされても、私にはどうすることもできない。咳き込んでいるので、窓全開でも気が散りそうになる。集中して血管を探す、よし入った。ステロイド入りの点滴、焼け石に水でもないよりまし。来てくれただけでも命が見捨てられてないと感じて希望が持てます。
こんなこと誰が知っているのか、どう発信すればいいのか。
今ここに居合わせている私でさえ、信じたくなさの気持ちが反発しているくらいなのに。
呼吸数54回、酸素吸入7ℓ、39度台の発熱が続く
大病院で陽性だけ検査して帰宅後、一週間
おいおい、これはこのままじゃ今夜死ぬかも。持病の薬が床に散乱してる飲めないよね呼吸数54回じゃ、まだ30代
できることは正しく、危機感が伝わる報告をすること
保健センターに、数値と判断を伝える
「早急な入院治療が必要です、そうでなければ感染症か呼吸不全か心不全かで急死の可能性があります」
どれだけ同じような報告を保健師が聞いているだろう、悲鳴の向こうにまた悲鳴がある。
訪問を終えての帰路、保健センターから電話が入った。
10分後に救急搬送できることになりました。
もしよろしければ搬送先を教えていただきたい。〇〇病院です。
おー、重度者治療の病院である。救えるかも。
ああ、よかった、ありがとうございます。保健師とほんの数分言葉を交わし、一緒に悲しんだり喜べるのが支えとなる。
コロナの訪問は100件を超えただろうか。入院調整中の数の増加に1000分の一と思う。急変を見つけても頼るかかりつけ医も入院もないなら私のやっていることに意味があるのか。いやあるからやっているのだ。
信じたくなくても、一丸となって本気の緊急事態宣言を皆でがんばるしかない。飲食や観光、私の人生の一部だ、絶対に守りたいと思う。だけど今の命なくして、未来はない。
全例入院治療がいいに決まっている。でも叶わないなら、医師にコロナ特例で免責されて、対面なしで在宅酸素、ステロイド、抗生剤、解熱剤、点滴をコンフォートセットにして処方できるようにしてほしい。まだ私自身は実施例は少ないが、これで救える命もかなりある。滞在時間も30分以内に留められる。
でも回復を約束できるわけじゃない。何もせずにいつとも分からぬ入院を待つよりいい。それを離れた家族は知っておいてほしい。たかがそれでも引き受け手がない中で全力を尽くしていることを理解してほしい。
この事態について全国民の理解が必要である。県外に住む家族においこらオマエ、治療せんか、入院させろとすごまれたってできんものはできん。
ご心配でしょう、そうですよね。私たちが生まれて、急病なら医師の診察、救急車があたりまえでしたね。残念ながら今の神戸はその状況にありません。静かに強く現実を伝えてゆく。もう何回目か覚えていない。30分から一時間はかかる。10人しか担当していない私でさえそれだから、保健所の電話がそんな電話で埋まる。保健師が次々倒れて、より人が減るのもあたりまえだ。倒れなければ休めない。
1000分の1のコロナの訪問看護を綴ってゆきます
今、酸素飽和度85%だった方、あかんかと思ってたら酸素、ステロイド、抗生剤3日目、94%にあがったと電話。そんな会話できる人だったことを今初めて知ったわ。私、こう見えて商売人やもの。話得意やねんで。うれし泣きで始まる今日の朝。
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神戸市の訪問看護師からのお願い
薬剤師さんへ
できたらステロイドを常備して、医師の指示が出たらできるだけ迅速に、家の中入らなくていいからポストインしてほしい。
酸素業者さんへ
医師指示が出たらできるだけ迅速に、家の中に入らなくていいから、玄関ドアのそばまで持っていって、電話で使い方を説明してほしい。できれば分かりやすいイラスト付きの説明書渡して下さい。
医師の皆さんへ
医師法にコロナ特例を作ってもらい、遠隔診療、電話診療、玄関3分診察で、コロナの場合は酸素飽和度93%以下なら在宅酸素導入、ステロイド、抗生物質、解熱剤のコンフォートセット自宅置き。そしたら本人、家族、訪問看護師の判断で素早く対応することができます。まだ少ない症例ですが、半分の自宅療養者の悪化が防げると感じています。2日後に変化を感じ、3日後にお、と感じる回復兆候があります。
訪問看護師の皆さん
電話をして健康観察をする時は、安静時の酸素飽和度だけじゃなく、廊下を往復して、無理ならちょっと長話ししている間、パルスオキシメーターつけたままで、数値の変化や息遣いも確認して下さい。自己測定が基本です。普段の看護とは違い、利用者と一緒に管理するんです。
神戸市民の皆さん
コロナの自宅療養は医師の判断にお任せはできません。一緒に戦うのです。私たちは長く病気になったら、急病になったら病院へ、そんな時代を生きてきました。信じられないと思います。私も信じたくありません。でも入院できないのです。救急車を呼んでも運ぶ先がないのです。誰も悪くありません。コロナという病気が強敵で、感染者が減らなければ信じられない状況は続きます。神戸市が、病院が、診療所が、保健所が、誰を責めても状況は変わりません。ご心配な気持ち、理不尽ですよね。でも責める声を強くすればますます自分を守りに入らねばならなくなり、療養者を守る力は弱まります。これはコロナという津波だと思って下さい。力を合わせてできることを増やすしかないのです。県外からでは帰れませんね。お電話で励まして下さい。玄関前おき指定で美味しいもの送って下さい。
皆さんには見えてないかも知れません。私には見えています。医療崩壊、保健所崩壊は私には関係ないと錯覚しますが、私たち皆の神戸市崩壊、あたりまえでかけがえのない日常を崩壊と訳して下さい。心が苦しくなるかも知れません。
今度の緊急事態宣言は、一致団結して緊急事態行動を取れるかどうかにかかっています。皆で命も暮らしも経済も守るためには一致団結しかありません。
私には光が見えます。きっと乗り越えられるとなぜか信じられるのです。どうでもよいことですが、小さな頃から先が見えて、勘がいいところが長所です。心配症で世話焼きなところが短所です。
見えない津波を一度だけ信じて、波が去るまで身を潜めてみませんか。本気の人がどれくらいいるかで波の去り方が変わります。私は専門家ではないですが、変異株と毎日会っていてそのパワーの強さ、素早さ、ずる賢さに圧倒されています。
お願いばかりすることをお許し下さい。